捺印と押印の違いは結構ややこしいです。
使い分けとして国が定めていることと、実際のビジネスや日常で使っていることと差があったりします。
捺印と押印の違いとして完全な決まりがあるというわけではないのですが、参考程度にご覧いただければと思います。
捺印と押印の違いはなくそもそも同じ?
そもそも捺印(なついん)と押印(おういん)は意味は同じで、ハンコを押すという意味※です。
※辞書によっては、捺印がハンコを押す行為、押印がハンコやスタンプなどを押す行為と分かれている場合もあります。
捺印と押印、本来は押印を使うべき?
捺印のほうが漢字としての歴史は古いのですが、1946年の当用漢字のあたりから押印を使うように推奨されてきました。2010年に公示された↓常用漢字でも、捺印ではなく押印をなるべく使うように言われています。
参照URL:http://www.clb.go.jp/info/other/houreiniokerukanji.pdfの6ページ目の3行目
では何故捺印を使わずに、押印を使おうと言ってるかというと、捺(なつ)という漢字が捺印や捺染(なつせん…染色用語・染物の会社で捺染色~会社は多い)以外に使われる漢字でないためです。
元々、漢字は似たような意味の字が多い為、似たような漢字の中でよく使われる漢字のほうに統一しようということから、押すという意味の捺は、同じ意味の押を代わりに使おうというようになりました。
ただ国から公示されている常用漢字(当用漢字)には強制力はありません。現に今でも見ることもあると思いますが、契約書の書類や、新聞などでも押印ではなく捺印という文言が多く使われています。
他の捺印と押印と同じ意味の漢字はある?
ちなみに同じ意味で押捺(おうなつ)という漢字があります。
押捺もハンコやスタンプを押すという意味もありますが、比較的指紋を押すという意味で使われることが多いです。
特に日本史の近現代を勉強してる方などは知っているかと思いますが、1980年代に指紋押捺拒否運動という運動で押捺という単語が使われていました。
- 指紋押捺拒否運動とは?
- 外国人登録証に指紋を登録することを拒否した外国人による運動(特に在日朝鮮・韓国人中心とした運動)
私の祖父などの世代は捺印や押捺という言葉のほうが一般的で、押印と言うのは違和感が今でもあるらしいです。
捺印と押印の違いは証拠能力?
しかし先程も触れましたが、ビジネスの場面や公的な契約書などでは少し捺印と押印の事情が違ったりします。今でも契約書などに捺印という文字がよくありますし、就活生なら会社のエントリーシートなどでも捺印の表現が使われていることが多いですね。
私もアパレルから転職したIT業界にいるときに、よく先方に出す秘密保持契約書などの文書には捺印を使っていました(あまり意識したことはありませんが)。
でよく言われるのが、捺印は署名捺印と、押印は記名押印というのがセット※であるということです。
※署名は手書き、記名は印字(パソコンなどのコピーされた字)
ビジネスの場面の捺印と押印の違い
ちなみに覚えておくと分かりやすいのが、捺印と押印の法的な証拠能力です。
法的に効力のあるサイン方法は、以下のような順番です。
- 署名捺印
- 署名のみ
- 記名押印
- 記名のみ
あくまでも署名と記名がどちらかがセットになって捺印か押印に変化するので、こういった形で法的に使い分けをしてるということだけ覚えておくといいですね。
簡単に言えば、署名押印・記名捺印とは言わないということですね。常用漢字的には、署名押印は正しいのですが汗。
ただそもそも手書きの署名を求める契約書でも、記名押印など書かれているモノもあるのが現状です(署名押印は正しい)。そういった場合は一番法的に証拠能力の高い署名捺印がベターな選択です。
日常生活などに置き換えると、宅急便・郵便の受け取りの際のハンコが押印、保険などの契約書などは捺印というような感じで使い分けるといいですね。
捺印と押印はオフィス用品では圧倒的に違いがあった!
また実際のところ、捺印が多く使われているところから現状うかがえることがあります。
それは捺印マットがあっても押印マットがないのです!
↑太文字黄色バックで言うほどのことでもないのですが、ASKULやAmazonなどで販売されているハンコ用の下敷き(マット)のほとんどが捺印という単語が使われているのです。
グーグルの押印マットの検索結果
グーグルさんは分かってますね笑。押印マットと検索したのに、捺印とちゃんと出てます。
ASKULの押印用下敷き検索結果
捺印だといっぱい商品が出てくるのですが、押印を入れると全く出てこない…
ちゃんと捺印マットだといっぱい出てきます。
こういったことを見ると、別に捺印は特別に常用漢字にしてもいいんじゃないかなぁと思います。現状ビジネスでは使われていますしね。
ただ単に押印が捺印に比べてまだまだ浸透していないということもありますが汗。
まとめ
- 捺印と押印は意味は同じで、常用漢字では押印を使うように言われている
- ビジネスでは捺印と押印は違う意味で、署名捺印・記名押印というように法的な証拠能力が違う
- 現状は押印はそこまで浸透していなく、捺印が幅広く使われている
本文では触れなかったのですが、朱肉を使わないと押せないハンコを捺印、シャチハタを押印と少数意見もあるようです。
これは非常に極端な例な気がしたので、割愛しました。
ちなみにシャチハタは2万回の捺印(押印or押捺)に耐えられるらしいです笑。