イギリスの革靴とイタリアの革靴の違いについて書いてみました。
よくスーツでも比較されるイギリス靴とイタリア靴ですが、靴でもスーツと同様似たような違いがあったりします。
個人的にはイギリス靴が好きなのですが、それぞれに一長一短あるので、インポートの靴を買う際に参考になればと思います。
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↑の記事では日本の革靴ブランドの中でイギリス的なブランド、イタリア的なブランドなど紹介しています。
靴のイギリスとイタリアの違いは靴の製法?
まず簡単に言うと、イギリス靴とイタリア靴の違いは靴の製法が異なります。
以下のような感じですね。
イギリス…グッドイヤーウェルテッド製法(※以下グッドイヤー)
イタリア…マッケイ製法
※あくまでも本格靴というカテゴリーに分けるとです。
製法については↑の記事で詳しく触れています。
イタリア靴はイギリス靴とは違い製法が豊富?
ただイタリアはマッケイ製法以外にも、ボロネーゼ製法や、ブラックラピド製法、マッケイ+グッドイヤー製法、オパンケ(オパンカ製法)製法など様々な製法で作られています(どの製法もマッケイの延長線上のような感じです)。
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ボロネーゼ製法の靴ならばア・テストーニが有名ですね。もちろんマッケイ製法もあります。
それぞれの製法が代表的な理由
で少し話を戻すと、イギリスでグッドイヤー、イタリアでは主にマッケイ、それぞれが主流になっている理由としては気候や文化が関係しています。
特にイギリスの場合は常に曇りで雨が降りやすいという気候で(厳密には日本と同様四季がありますが、一日の天気の変わり方が激しい)、雨が降っても靴底が染み込みにくいグッドイヤー製法が根付いたんだと思います(マッケイ製法は製法上、雨だと染み込んできやすいです)。
その反面、イタリアは牧畜が盛んな地域(乾燥地帯)なので、牛の革もよく取れ、気候も乾燥気候なのでグッドイヤーよりもマッケイが主流になったのだと思いますし、後は軽やかに着るイタリアンスーツに対する考え方もイタリア靴には関係していると思います。
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もちろん、仔牛(こうし)を使った料理(オッソ・ブーコやカツレツ)がイタリア料理では代表的だったりするので、若い牛の柔らかい牛革が手に入りやすい環境ということもあり、相性のいい軽く柔らかい履き心地のマッケイ製法が主流になったというのも考えられますね。
靴のイギリスとイタリアは色気でも違いがある?
製法の違いが主にイギリス靴(グッドイヤー)・イタリア靴(マッケイ)とあるわけですが、製法によっても靴の印象は非常に変わってきます。
例えるなら、イギリス靴(グッドイヤー)は武骨で、イタリア靴(マッケイ)は色気があると言ったほうがいいですね。具体的に言えば、コバの張りだしやウエストの絞りがグッドイヤーとマッケイでは変わってきます。
コバの違い
まず製法上グッドイヤーはマッケイとは違い、本体と靴底ををくっ付けるのにウェルト出し縫いをします。その為、コバが上から見ると張り出しているようなデザインになります。
画像参照元:フェルマート楽天市場
左がマッケイ製法のテストーニ、右がグッドイヤーのチャーチのグラフトン。
その為、マッケイに比べると右のグッドイヤー靴のほうがコバが張り出し武骨な印象を与えているのが分かると思います(もちろんエドワードグリーンなど高級なイギリスのグッドイヤー靴は、コバの張り出しを極力抑えています)。
ウエスト絞りの違い
そしてもう一つはウエスト(土踏まず)の絞り方の違いです。マッケイの場合は、ウエストを極限まで絞ることで、グッドイヤーにはない色気が出せます。
あんまり見た目は分かりずらいですが、左のテストーニは結構ウエストを絞っています。
グッドイヤーでも極限までウエストを絞ろうと思えば絞れるのですが、工場で生産時に出し縫いするときに大変で、先程も挙げたようなエドワードグリーンやクロケットアンドジョーンズのハンドグレードのような高級靴じゃないとグッドイヤーでウエストは絞ってはいませんね。
なのでそこまでウエストを絞っていない武骨なグッドイヤ―と言えば、チャーチの173ラスト(旧チャーチだとさらに武骨な73ラスト)や、サンダース、トリッカーズのドレスラインなどはザ・グッドイヤー靴という感じですね。
靴のイギリスとイタリアは違いは靴底にも表れる?
また細かく言えば、靴底(アウトソール)の分厚さもイギリス靴とイタリア靴とでは違います。イタリア靴はシングルソール、イギリス靴はダブルソールが一般的です(イギリス靴でも高級靴になるとシングルソールになることが多いです)。
上がイタリア靴のシングルソール、下がイギリス靴でダブルソール。
テストーニとチャーチのグラフトンというすごく極端な例を出してみましたが、逆に言えばイタリア靴でグラフトンのようなダブルソールの靴底の靴はそこまで見かけません。わざわざマッケイの軽い柔らかい製法であえて分厚い靴底にする必要がないですしね。
ただタイユアタイのフランコミヌッチさんがボリーニ(もしかしたらマリーニかも)の靴に分厚いラバーソールで合わせているというようなこともありますが、かなりの例外です。
ラバーソールでもイギリスとイタリアとの違いがある?
またラバーソールでもイギリス製とイタリア製では違いがあります。
代表的なゴム底だとイギリス製のダイナイトソール、イタリア製のビブラムソールがあります。ダイナイトソールはグッドイヤー同様硬く、ビブラムソールは柔らかいソールですね。
ちなみに日本の三陽商会がやっている三陽山長は、アッパーソールにイタリアのタンナー、イルチアカーフを使って表革は非常に柔らかい革を使っています。その為、グッドイヤー靴を作っていますが、ラバーソールにはビブラムを採用しているので履き心地は非常に軽やかです。
まとめ
- イギリス靴とイタリア靴の違いはグッドイヤーとマッケイで製法が異なる
- グッドイヤーとマッケイの製法の違いで武骨さや色気などの違いも出てくる
- ラバーソールでもイギリスとイタリアの違いがある
もう少し細かく言えば、靴のデザインでもラウンドトゥ(つま先が丸みを帯びた形状)なモノが多いのがイギリス靴、スクエアなトゥのデザインが多いのがイタリア靴というような見た目の判断は付きやすいですね。
個人的には、スーツはイギリス的なスーツを着るので、少し武骨なイギリス靴のほうがバランスは取れますね。