スーツのイギリスとイタリアの違いを、スタイルと生地など2つのポイントでまとめてみました。
また基本的にはスーツ業界はイタリアの影響を常に受けています。スーツ発祥の地はイギリスですが、スーツのトレンドの発信地はほぼイタリアです。
※ちなみにイギリスのスーツを仕立てていたのは、イギリスに職を求めたイタリア人だったりします。
その為、イギリスとイタリアという枠組みで考えるのは非常に複雑なのですが、分かりやすく解説してみました。
それぞれのスタイルの特徴
まず、イギリスとイタリアのスーツのスタイルの特徴を端的に言うと…
- イギリスが鎧
- イタリアがカーディガン
と言った表現になりますね。
鎧(よろい)のイギリス
まず、イギリスのスーツジャケットスタイルは肩パッドが厚く、シャツやネクタイのVゾーンが狭いスタイルです。
主に前釦が3つで、前釦2つでも比較的高めの位置に設定されています。※日本では最近はほぼ2つボタン。
まるで鎧(よろい)を着ているかのようにスーツを着るのがイギリスのスタイルです。特に背筋を伸ばして着ないと綺麗なシルエットにはならないので、肩が凝ります笑。
特にイギリスのスタイルはボタン位置が高いので、小柄な人は小さく見えています。その為、小柄なアジア人や日本人にはあまり人気がありません。
ただ、身長が高い人(175cm以上ぐらい)が着ると、非常に見栄えがいいです。
日本人では着る人の体型を選ぶ傾向が、イギリスのスーツスタイルにはありますね。
若者にはモダンブリティッシュスーツ
とはいっても、若者向けのイギリススタイルのスーツは、日本でも既成スーツのライセンスブランドやイージーオーダーのブランドでも買うことが出来ます。
有名どころだと…
- ティモシーエベレストやリチャードジェームス
- スペンサーハート
既成スーツのライセンスブランド
イージーオーダー(伊勢丹ではメジャーメイド)
基本的なスタイルは変わりませんが、モダンブリティッシュスーツはシルエットは細く、若い方には人気です。
これはイギリスのスーツスタイル全般に言えますが、最近ではイタリアの影響を受けて肩パッドが薄くなったりはしています。
カーディガンで体を包み込むようなイタリア
そして、イタリアのスーツジャケットのスタイルは、肩パッドは薄めでアンコンスタイル(肩パッドでなく薄めの芯地だけ入れた肩回り)です。
イギリスのパッドがもろに入った肩回りとは対照的に、ナチュラルな肩回りなのでカーディガンのようにストレスなく着れるのが特徴です。
また冒頭でも触れていますが、イタリアはフィレンツェで開催されるピッティウォモという展示会が、ファッションの最先端であり、スーツスタイルの最新もイタリアが発信地となっています。
日本でも非常に人気があり、ほとんどの日本のスーツメーカーやなどがイタリアの形を基準にスーツを作っています。
ナチュラルな肩回り以外で特徴なのは、以下の3点ほどです。
- 袖であれば重ねボタン
- スラックスなら裾幅を極端に細くしたタブル
- ジャケットの裾からヒップラインがはみ出ている
通称キッシングボタン、ボタンとボタンの間が密接しているところからきている。右が通常の袖のボタン(並びボタン)
例えば、雑誌では裾幅18.5や19.5等ありますが、体型によります。
イギリス人はイタリア人の見分け方として、判断する人も稀にいます笑。ちなみにヨーロッパだとゲイ扱いです。
イタリアは最新だが、古くなるとダサくなる
ただイタリアスタイルのスーツの場合、スタイル(ラペル幅やゴージの高さ)が何年周期かで変わってしまうため、数年前に買ったスーツなどは結構ダサくなりがちです。
特に北イタリアで作られているベルベストのスーツなどは、何年か経つと非常に古臭くなりがちです。
イギリスとイタリアのそれぞれのスーツ生地の特徴
それでは、スーツ生地に関してはどのような違いがイギリスとイタリアにあるのでしょうか。端的に言えば…
- 耐久性のあるイギリスのスーツ生地
- 発色の良いイタリアのスーツ生地
といったところですね。
耐久性のイギリス
まず、イタリアの生地より、耐久性であればイギリスの生地のほうが断然優れています。
いわゆる目付という言い方で、目付が重い生地がイギリス生地なのです。
ただイギリス生地はイタリア生地と比較して、色っぽさがないのが多いです。
発色がいいイタリア
対照的にイギリス生地にない発色を持っているのが、イタリア生地の特徴です。特に淡い色のストライプや、独特な発色が良いですね。
しかしながら、イギリス生地と比較すると耐久性が劣る生地が多いです。
気候が関係している
ただこういった背景は、イギリスとイタリアの気候が関係しています。
イギリスは年中曇っており、湿気が多くイタリアのように目付が重たくない生地だとすぐによれよれになってしまいます。
またイタリアは地中海気候で、空気が乾燥しているため軽やかな生地でも湿気を多く含まず、生地のヘタリが遅いのです。
日本であればどっちがいいか
そう考えれば日本では湿気の多い梅雨の時期であれば、目付の重いしっかりとしたイギリス生地で仕立てたスーツ。
空気が乾燥する冬などの時期などであれば、目付が軽いイタリアの生地で仕立てたスーツを着る等、日本は四季を活かしたスーツの着方が出来ます。
しかしながら、イギリス生地が好きな私にとっては痛い悩みがあります。イギリス生地は比較的高価なのです。
日本人はイタリアが大好き
というのも日本に入ってきているイギリスのライセンスブランドや日本のメーカーも、見栄えがいいイタリア生地や、イタリア生地のように見せた艶(つや)や光沢がかった生地を使います。
イタリアスタイルの軽やかさのあるスーツや、イタリア生地の発色などは、日本人は好きなんですよね。
そういったこともあり、イタリア生地のほうが流通は多く、ややイギリス生地は高価になってしまっています。
最近では既成スーツで安いアルフレッドブラウンなどのイギリス製生地が出回っていますが、やはりハリソンズやマーティンソン、テイラー&ロッジなどの本格派のスーツ生地を使ったモノが安く買えればと切に願います笑。
百貨店の外国展ではイタリアが1番人気
これはスーツだけの話ではありませんが、百貨店での特別催し物などで開催される外国展はイタリアが1番人気です。
食べ物は確かにおいしいですし、格言う私もペペロンチーノやピザは好物です。
やはり日本人はイタリアが好きなんですよね。
まとめ
- イギリススーツは鎧、イタリアスーツはカーディガン
- 生地の耐久性ならイギリス、生地の発色ならイタリア
- イタリア生地は流通が多い、イギリス生地は流通は少ないのでやや高めの値段
いかがでしたでしょうか?
イギリスとイタリアのスーツの違いを見てみると、日本であれば四季がありそれぞれのスーツを楽しむ土壌があります。
もう少しイギリス生地のファンが増えれば生地が安くなるので、個人的には嬉しいのですが今後どうなるでしょうか笑。